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ストレートに言葉を吐きたくなる。
左手と左足に火傷を負った。
火傷、と言っても、そんな大層なものじゃない。焼けてただれた傷よりも、もっとあさい、赤い花。
なのに妙に痛くって、だけど何故かフライパンを離す事が出来なくて、飛び跳ねた熱の塊は私の肌に跡を残す。
冷やす、という事をしたのは、本当に痛くて仕方がなくなってからだった。
昔は怪我をすると安心した。
嗚呼良かった生きてるよ。痛いもん。生きて現実にいるんだなぁ。
何がどうなってそんな子に育ったのかはサッパリわからない。でも、確かに安心した。
風呂場で傷口にシャワーの冷水を浴びせながら、ふと、そんな事を思い出し、首を傾げる。
はて、なら、今はどうだろう。
私は今、安心しているのだろうか。
火傷を負った、という事に対して、何か感情はわいてくるだろうか。
答えは否だ。
何となしに、ぼんやり、シャワーの水を眺めて、ああもうすぐバイトだ家をでる時間だなぁと思っているだけで。
あ、なるほど、これは幸せだと思った。
今の私には、怪我なんかなくたって、生きている実感があるという事だ。
他の誰かの価値観なんか知ったこっちゃない。私には、それは確かな幸福だ。
手を伸ばせば取ってくれる人もいるし
泣いたらティッシュをくれる人もいる。
泣かないでいたら怒ってくれる人もいるし
我慢すれば先に泣いてくれる人もいて
間違えれば正してくれる人もいる。
赤く腫れた火傷を撫でながら、メールを打っていた。
細い細い糸の先は、何と、私が勇気を振り絞れないで居る間に、向こうから歩いてきてくれたのだ。
臆病者の私が、何日も何週間も何ヶ月もいえないでいた一言を、当たり前のように言いながら。
何だかふわふわしたまま家を出た。火傷の痛みだけが妙にリアルで、その分、ああどうしよう幸せだなぁと思った。
バイトに行くと、だいすきな神父さまが倒れてた。
あっぷあっぷした。ビックリしたし、怖かった。
いつも助けてもらってばっかりだから、ちょっとでもお礼がしたくって、私は必死になってしまう。
神父様が休めるように、一生懸命やってみたけれど、結局、私が一番上に立っても上手く店が動かない。
わからない事も出てきてしまって、しぶしぶ、神父様に聞きに行ってしまう。
答えてもらって、あ、ってなる。何だ。考え方を変えたら、私にだってわかったのに。
私が貧血を起した時、神父さまは私を家に帰してくれる。
もちろん、わからない事を聞いてきたりも、しない。私は阿呆面さげて、家でぐーぐー寝て、回復する。
情けなくってしょんぼりする。神父様は、ちょっとしんどそうに、だけど、笑って仕事に戻った。
落ち着いた神父さまは、いつものようにストレートな言葉をくださる。
あなたの顔を見ると元気になりましたよ。助かりました。
火傷の事を言えなくなった。
確かに痛かったのに、どうでも良くなって、あれ痛かったっけって思い始める。
出来る事をしようと思って泣きたくなった。おー、と右手を振り上げたら、まだまだがんばれそうな気になった。
休憩時間に携帯を開くとメールが来ている。それが当たり前みたいになったのはいつからだったか。わからないけれど、またちょっと元気になる。返事を打ちながら笑ったら、通りすがりのおじちゃんがヘンな顔をした。
胸を張って大好きだと言える人が、傍にいて、確かに繋がっている事が、きっと何よりの幸せで、生きているという事だと思って、ヘンな顔をしたおじさんが青信号を渡るのを眺めていた。
じぶんはちっぽけだ。
いえないでいた言葉は、いえないままで、貰ってしまって
どんなにがんばっても、助けられない。
でも、だからこそ、頑張れるんですよと神父様は言う。
助け合おうとして努力が出来るんですよと言う。
助け合うこと。
私は、私を助けてくれている皆さんに、同じだけのものを返せているのだろうか。
考えても、私にはわからない。
わからなくて良いんだと思った。それがきっと、助け合うという事なんだろう。
寝て、起きても、なんどそれを繰り返しても
ねっこにこの気持ちを持っていられるにんげんになりたいなと、思った。
家に帰って、火傷に薬を塗った。
明日も頑張る為に。
私は明日も、皆さんが大好きです。PR
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